その人にしかできない仕事

炎のように生きる

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ひまわりに象徴されるもの


市村正親主演の舞台『炎の人』を観に行った。

太陽とひまわりの画家として、そして、ときに狂気の画家として、
天才画家ゴッホの激しい炎のような生涯を鮮やかに描き出した戯曲。


会場ロビーは、ゴッホの代表作としても知られる
「ひまわり」の花で埋め尽くされていた。

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求めたのは愛


私は10代の頃からゴッホの絵画作品が好きで、
以前にもこのブログでゴッホの生き方について取り上げたことがある。


舞台を観る前の私の中のゴッホのイメージは、
火のように熱く、ナイフのように尖った「激しい人」だった。

随分前に観た映画版の「ゴッホ」は、
確か麦畑でピストル自殺を図るシーンなど鮮烈な印象だった気がする。


だが、今回観た市村正親演じるゴッホは、
なんとも女々しくて、切なくて、何だかそこらへんにいそうな、
気が弱く優しい人に見えた。。

いつも誰かに理解して欲しくて淋しくて、
愛に飢えた純粋な人だったのかなと思ったら、
ゴッホがより一層身近にも思えた。


益岡徹演じるゴーギャンが、職も妻子を捨て
芸術家らしく傲慢なまでに自由を追い求めるのと対照的に、
ゴッホはある意味とても心優しく、とても「まとも」な人だ。


弟のテオ以外に、誰か一人でいいから・・・
彼を心から理解し愛する人がずっと側にいてあげたら
彼はもっと長い人生を生き、
もっと多くの作品を残したかもしれないのにと思ったりした。


でも、もし彼が心も生活も満たされていたら、
数世紀を超えて今もなお人々の心を揺さぶるあの強烈なエネルギーは
彼の絵から感じ取ることはできなかったかもしれない。


渇望がもたらす創造性

なんだか最近よく思うのだ。


満たされることが人生ではなくて、
満たされたいと願って生きる過程が人生なのだろうと。

時に、満たされない想いの強さが偉業を生む。


ラストのナレーションが印象的だった。

あなたの頭は時々狂ったが
あなたの絵は最後まで狂わない。
脳病院の庭で、発作の翌日描いた絵でも線と色はたしかだ。

絵はあなたの理性であり、
絵はあなたの運命であった。

運命のまにまに、あなたは燃えて白熱し、飛び散り、完全に燃えつきた。
最後の時にあなたはテオの手を掴んで
もう俺は死にたいと言った。
もう俺は死にたいと......

(中略)

苦しみの中からあなたは生れ
苦しみと共にあなたは生き
苦しみの果てにあなたは死んだ。
三十七年の生涯をかけて
人々を強く強く愛したが
やさしい心の弟のテオをのぞいては
誰一人あなたを理解せず、愛さなかった

あなたはただ数百枚の光り輝くあなたの絵を
世界の人々にえがき贈るだけのために
大急ぎに急いで仕事をして生涯を使い果した。

絵を描く時の歓喜だけがあなたの生甲斐で
あとは餓えと孤独と苦痛ばかりであった。

(中略)

あなたの絵は今われわれの中にある。

貧乏と病気と、世の冷遇と孤独とから
あなたが命をかけて、もぎとって
われわれの所に持って来てくれたあなたの絵は、
われわれの中にある。

それならば、われわれも、もう不平は言うまい。
それならば、あなたも、笑って眠れ。
あなたは英雄ではなかった。
あなたは、ただの人間であった。

人間の中でも一番人間くさい弱さと欠点を持ち
それらを全部ひきずりながら
けだかく戦い、戦い抜いた。

だから、あなたこそ本当の英雄だ。


ゴッホは一体何のために仕事をしたのだろうか・・・

後世の人々に絵を送るため?


いや、そんなはずはない。

それは彼が彼として生きるために、
人生のすべてを賭けねばならないことだったのだろう。

生きるために絵を描くことを仕事にしたのではなくて、
生きることさえ犠牲にして絵を描き続けたゴッホ。


私はずっと、生活のために「対価」を得ることを
仕事と呼ぶのだと思ってきたけれど、
仮に対価を伴わなくても、
その人にしかできない「仕事」というものが存在するのだと強く感じた。


逆に、ほとんどの人が、当然のように対価を求めるから、
自分の本当の「仕事」に気付けないまま人生を終えてしまうのかもしれない。

Comment

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それがまさに天職と適職ってことだよね。
皆、適職を求めて生活したいと思ってる。
でも天職を全うして生きようとすると時には生活がままならないこともある。
それを貫くにはゴッホの様に強烈なパワーが必要なんだよね。
各偉大な芸術家達もその狭間で苦しみながら作品を生んでいるけど、それを美しいとか力強いと感じられるのは当人じゃなかったりするんだ。

それを芸術だというのかもしれないね。
お金じゃない、人の心を動かす、それが天職なのかもしれないね。

私もそういうモノを作りたいと、貫きたいと思うよv

  • 2009-06-16
  • form: yuki