【書評170】シリコンバレーは私をどう変えたか―起業の聖地での知的格闘記

梅田望夫著

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著者紹介

ミューズ・アソシエイツ社長。パシフィカファンド共同代表。(株)はてな取締役。
1960年生まれ。慶應義塾大学工学部卒業。東京大学大学院情報科学修士。
コンサルティング会社「ミューズ・アソシエイツ」をシリコンバレーに設立。
2000年7月、岡本行夫氏らとベンチャーキャピタル「パシフィカファンド」を設立。


シリコンバレーからの手紙

1994年、30代半ばでシリコンバレーに渡り、
勤めていた大手コンサル会社を辞めて起業した梅田氏。

その間『シリコンバレーからの手紙』の題して、5年間に渡り
日本の知人に月1で送っていた60本の現地レポートを中心に、
ネットバブルに沸き立つ当時のシリコンバレーの様子が綴られている。

GoogleやAppleのような革新的な企業がその産声をあげ、
インターネットという新しいテクノロジーの誕生が
多くのIT起業家が夢中にさせたまさにその時代の渦の中で
シリコンバレーという地に、日本人として彼が見たものは何か。。

●(米国ではベンチャー企業が)資金尽き、力尽きて倒れても、
 ベンチャー・キャピタルからの資金は借金ではないし、
 事業と個人の間には明確な一線が引かれているから、
 経営者の個人資産にまでその債務が及ぶことはない。

 「仮に事業が立ち行かなくなって、失うものは何だろう」と、
 創業者たちがふと最悪の場面を想像するとき、
 それは自分たちが夢を追いかけた膨大な時間とエネルギーだけだと
 思えるに違いない。
 ならばやってみよう。「Nothing to lose!」(失うものなど何もないさ)。
 だから皆、何の憂いもなく、思いきり冒険(ベンチャー)できるのである。

●全米トップ10の大学や大学院を優秀な成績で卒業する学生の多くが
 起業家を志向し、限られた米国移民ビザ申請の待ち行列には、
 中国、インド、ヨーロッパ、アジア諸国の「頭脳に自信のある者たち」が
 ずらっと並び、順番を待っている。

●(「シリコンバレー型」とは)優秀で先見性があって技術や経営についての
 潜在能力を持った普通の人たちのチームが、
 「失敗しても返さなくていい」資金をベンチャー・キャピタルやエンジェルから
 投資して調達し、一銭の借金もすることなしに、急成長して上場したり
 大失敗したりできる。
 
 (中略)

 このタイプの「シリコンバレー型」ベンチャーが次々に生まれる仕組みこそが、
 新しい日本の産業プラットフォーム(土台)となるべきなのだ。
 
●「そうなんだ。何でもかんでも、すべては個人の中から生まれるんだ。
 会社からじゃないんだ。価値を生み出すのは会社ではなくて個人なんだ。」

●「ここシリコンバレーで色々な人たちに出会い、色々な人たちの考え方に触れ、
 色々な人たちの生きざまを見つめ、最近私の中に芽生えてきたのは、
 彼らの『個人としてリスクテイクする生き方』への憧憬とも言うべき感覚です。
 またその文脈で『変化していく自分』を楽しもうという気分も生まれつつあります。
 今年は自分の身の上にどんなことが起こるのだろう、来年の今ごろは
 何をしているのだろう。そんなことまでひっくるめてすべてを
 『前向きに、明るく、真剣に、楽しんでしまおう』という気分は、
 新しい感覚の萌芽と言えます」

●充実感の根源にあるのは、物事を決めるのは自分であって、
 自分以外にはなく、物事を決めないでいると何も起こらないかわりに、
 決めたとたんに物事が進んでいくという事実である。

●自分一人の能力でこなし得る仕事量を上限に仕事を断ってしまうのが、
 「単なる独立」である。
 一方、そこに需要があるのだから、しっかりした供給体制を整備し、
 成長できる構造を作ろうとするのが起業である。

●「20代前半で大学を出る、20代半ばから30代半ばくらいまでで自分が何者なのか、
 何ができるかを模索、30代半ばから50歳くらいまでがんがん働いてしっかり稼ぐ、
 そしてアーリー・リタイアメント」
 
 (中略)

 そこで、大組織に依存しない生き方が、魅力あるものとして自然に浮上してくるのだ。
 それが、ベンチャー・ビジネスとスモール・ビジネスである。

 ベンチャー・ビジネスとは、ベンチャー・キャピタル等から資金調達して会社を興し、
 株式公開を目指すという大掛かりなもの(中略)

 スモール・ビジネスとは、自己資金で起業し、自分の経験が活かせる領域で
 小さくても収益性の高い事業を作り、だんだんに人を増やして、
 少しずつその事業を大きくしていくというものだ。


日本でも「起業」をエリートコースに

私が前職で起業支援をしていたときに考えていたテーマがこれだった。

日本ではなぜかエリート程、官僚や大企業という保守的な道を選ぶのは
一体なぜなんだろう???
と、純粋に疑問に思っていたから。


優秀な頭脳の持ち主こそ、新しい価値の創造に、新しい秩序の構築に、
無から有を生み出す喜びに、もっとステイタスを感じてもいいはずなのに・・・


私も大きな会社にいた時代が結構長かったが、
大企業にはやっぱり、「本当に頭いいなぁー」っていう人が沢山いる。

いわゆる「地頭がいい」というやつ。

なのに、なぜか皆けっこう画一的な仕事をしている。
飲みながら上司の愚痴をこぼしてうさを晴らしていたりする。


私がそんなに頭が良かったら、
絶対自分の力で誰もやっていないことをやってやろう、とか、
(ミーハーだけど)絶対有名になってやる、とか
雇われるのなんかまっぴらだぜ、とかって思うのになぁー、、

などと、思っていた(笑)。


日本では、起業して成功するのがあまりにも「特別なこと」で、
資金的にもやり直しがきかない感覚が強く、
頭の良い人ほど、そのリスクや成功確率を冷静に分析すれば、
大企業に属していたほうがリターンが大きい、という結論になるのかもしれない。


やっぱり特別な人が特別な才能と特別な方法で起業するのではなくて、
本書にもあるように、

普通の人たちが

普通のやり方で

社会の仕組みとして起業による利益を享受できるが
もっと日本にも整うべきだと思う。

***

なんて言ってたら、世は100年に一度の不況になった・・・

もともと国民性として起業を好まない日本において、
こんな話してもしょうがないか・・な・・・。


今日もYahoo!のTOPページ見てたら
特集が「手作り弁当で節約」とかそういうのばっかりだし。

あれ?もしかして私って、
読んでる本とか思想自体が、まるで時代じゃない感じ!?(笑)


確かに今書店に並べたら絶対売れなそうな本だ。
2001年初版の本で、私は会社の本棚でたまたま見つけて読んだのだが。


最近の書店には
「いかに不況を生き抜くか」
「会社を倒産させないためには」
という類の本ばかり並んでいる。

それだけ厳しい時代だというのはもちろん理解しているが、
つい最近まで、雇われない生き方や起業本が花盛りだったのに、
今度は突然「非正社員から正社員になる! 」というような本のポスターが
デカデカと張られているのもどうなんだろうかと思う。

不景気でものが売れないと言いつつも、
起業だ、いや、やっぱり正社員だと消費が翻弄される。

「働き方」は自分の人生そのものなのに
そうやってメディアに踊らされてポリシーを見失うから
余計時代に人生が左右されてしまうのではないか。


だから私は最近、日経新聞は読まないことにしている。


暗いニュースばかりで
夢を見失いそうになるから(笑)。

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