【書評124】一勝九負

㈱ファーストリテイリングCEO 柳井正著

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不景気に強い企業


今日の新聞に、この不況下業績を伸ばし過去最高益を記録した企業が
取り上げられていた。

過去最高の収益を記録したディズニーランドのオリエンタルランド。
Wiiの任天堂。
モバゲータウンのディー・エヌ・エーなど・・


少し前の記事なるが、
「ユニクロ」も過去最高の売上高と、業績好調だ。

カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング
9日発表した08年9~11月期連結決算は、売上高が前年同期比
17.5%増の1885億円、営業利益は45.6%増の409億円と
大幅に伸びた。保温性肌着「ヒートテック」などヒット商品が相次ぎ、
値引きを抑えられたことが奏功した。

国内の既存店の売上高は17.7%も増加。衣料品不振が流通各社の
業績悪化の主因となるなか、「一人勝ち」の様相だ。好調を受け、
09年8月期の通期業績予想も上方修正した。国内ユニクロ事業の
売上高は08年10月時点の予想より200億円も増え、5020億円に
なる見込みという。

asahi.com(朝日新聞社)
2009年1月9日20時9分


企業の成長が止まるとき

この本は、一大旋風を巻き起こしたフリースブームにのって、
99年に東証一部上場を果たしたファーストリテイリングが、
その後の新商品展開に苦戦し急激な業績悪化に陥った時期に
代表取締役会長兼CEOの柳井正氏によって書かれた著書。


山口県で父親が経営する小さな会社を継ぎ、
84年、柳井氏35歳の時に「ユニクロ」一号店は広島県でその産声をあげた。

それから15年余り。


それまでの日本にない新しい市場を創造し巨大企業へと成長し、
ゆるぎない成功を手に入れたかに見えたユニクロ。

が、やがてその栄光にも陰りが訪れる。
フリースブームが過ぎ去り、その成長が止まってしまったかに見えたこの時期に、
ユニクロの生みの親、柳井氏は何を考え、何を願っていたのか・・・


●人は安定を求めるようになるとそこで成長が止まってしまう。
 (中略)
 到底無理だと思われる目標でも、綿密に計画をたて、それを紙に書き、
 実行の足跡とつねに比較し、修正していく。
 そうすれば大概なことはうまくいく。 大事なのはあきらめないことだ。

●成長している企業には、ある時期、ある時期で必要な人が、
 必然的に集まってくる。 自分の会社には人材がいないと
 ぼやく経営者が結構多いようだが、それはおかしい。
 本気で集める努力を怠っていると思うし、
 人材以前の問題がその会社にはあるはずだ。

●商売というのは何でも結果論で、「勝てば官軍」なのだ。

●会社を経営するうえで一番重要なのは「どういう会社にしたいか」と、
 「どういう人たちと一緒に仕事をしたいか」を明確に示すことだと思う。

●明確な経営理念を持ち、経営者からすべての社員にいたるまで
 それを価値観として共有し、行動する。
 われわれは社会に対してこういう良いことをやっているのだ、
 という思いが誇りにつながる。

●すべての人たちが、一人ずつ"自営業者"としてその会社にコミットする。
 そういう組織を目指すべきだと思う。
 その大前提として、経営に対する考え方、経営理念が明確に示され、
 経営者たちが何を考え、何を実行しているのかも
 オープンになっていることが必要だろう。(中略)
 将来は、社内とか社外の区別や境すら意味がなくなり、
 どこまでを社内でやるべきか、どこから社外の人にやってもらうかなどという
 線引きもしなくなるかもしれない。

●今の日本の大企業をみてみると、
 若い人が経営者として活躍する機会がなさ過ぎる。

●百メートルを九秒九で走るのは才能がないと無理だと思うが、
 みんなでやる商売だと百メートルを九秒九で走れる可能性がある。
 それは、チームを組んで全体のバランスやそれぞれの機能を
 強化していった結果、方向性さえ間違っていなければ、
 百メートルを九秒九で走れる可能性が出てくるということだ。

●何が必要かといえば、「覚悟」の一言に尽きる。
 それではその「覚悟」はどうすれば身につくのか、
 実際に会社を回してみて学びとり体感する以外に方法はない。

●理想的な会社にしようとしたら、正しい考えの人たちが、
 目標に向かって正しく実行できるような会社にしないといけない。

●去年と今年を変えない限り、会社はつぶれると思って欲しい。

●「会社組織はコンピュータに似ている」(中略)
 どこか一ヶ所がダウンすると、全部が回らなくなる。
 会社の組織は、すべてが連動していないと目的を達成できないのだ。

●設立当初から「こういう会社にしたい」といった一貫した長期ビジョンがない会社は
 成長しない。自動的に商売が繁栄するということは、普通はありえない。

●「もっと良くなる」と信じて商売をやることが、成功のコツなのだ。
 未来はよくなると思わなければ誰も行動しない。

●多くの人はボヤッとしか考えていないと思う。ボヤッと思っていてはダメだ。
 明確に「目標、目的、コンセプト」を前者、チームひいては個人で持つと、
 持たなかった場合、と比較して百倍ぐらい違ってくるはずだ。

●自分を客観視できないと、優秀でも考え方が甘い、
 単なる自我が強い人だと思われる。(中略)
 頭が良い人、自分の論理に自信を持っている人ほど、
 もっと自分を批判しないと生き延びられないのではないだろうか。

●組織が大きくなると、はじめに組織ありきで仕事を作ってしまいがち。
 しかし、組織は仕事をするためにある。
 仕事がなかったら組織は必要ない。
 仕事をするために、どういう組織がよいのかを柔軟に考えなくてはならない。

●「仕事イコール顧客の要望に応えること」

●仕事をするために組織があって、顧客の要望に応えるために
 取引先・社員があるのだ。
 何かが機能せず、組織がおかしいなと思ったときはいつも、
 この順序を正すようにしていただきたい。


私の記憶の中のユニクロ

私は福岡県北九州市出身なので、関門海峡を渡れば、
そこはもう山口県である。


だから創業間もない、東京に進出するはるか前のユニクロをよく知っている。


当時は今のユニクロとはかけ離れた田舎町の小さな洋服屋さんで
現在のような独自のブランディングも一切なかったし
お洒落なイメージなどかけらもなかった。


ただ、とにかく安かったので、
初めて自分で洋服を買いたくなる中学生くらいの年頃になって、
少ない小遣いを握り締めて靴下やTシャツを買いに行く、
私の中でユニクロはそんなイメージだった。


だからその後10年近く経って、
ユニクロが東京の原宿なんかに、カッコイイ感じで登場して
テレビCMなんかも流れちゃったりして、
お洒落な東京の若者たちがこぞってユニクロのフリースを着始めたときには
随分驚いた。

「ユニクロって、、だって『あの』ユニクロでしょ??」みたいな(笑)。


そう、それは並大抵の努力ではない。

私が子供から大人になるのと同じだけの時間をかけて
『あの』ユニクロが『今の』ユニクロになるために、
柳井氏がどれだけの努力を続けてきたかがこの著書からは強く伝わってくる。

その努力が報われ、一時は大きな成功も手に入れた。


それなのに、商売というのは本当に残酷だ。
膨大な時間と努力と引き換えに柳井氏がようやく手に入れた、
束の間の勝利の美酒に酔うことさえ時代は許しはしなかった。


ブームの最中、フリースの「次の」商品開発が遅れたことの反省を
柳井氏は著書の中で繰り返す。

そして不可能を可能にし続けてきた原点の想いに立ち戻り、
経営理念、目標、目的、コンセプトを
何度も自分自身に問い直しているようにも見える著書だ。


この時期、創業以来走り続けてきた柳井氏は
始めて歩みを止めて自分の会社を客観的に見つめなおしたのかもしれない。


そして、その結果は、、

冒頭の記事が示すとおりである。


ユニクロのサクセスストーリーは終わってはいなかった。

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