まず自分から与える

ある女性経営者の横顔

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私が仕事をしていて一番嬉しい瞬間は、
長い時を経て、人とのご縁がつながったとき。

5年前の出来事

私が美容情報誌の創刊準備をしていたときのこと。

都内に星の数程あるエステサロン。
その多くを、女性オーナー、女性店長が切り盛りしていた。

中でも特に印象的だったあるサロンのオーナーのなおみさん。

当時は都心から少し離れた私鉄沿線の住宅街の中でひっそりと
自宅と兼用の小さなサロンを経営しておられた。

外見も物腰も優雅で美しい彼女は、
営業で訪問した私にも、とても優しく接してくださった。

そして、商談のあと、なぜか突然
「岡崎さん、まつ毛のエクステやってみませんか?
絶対可愛くなるから!」と言って、
無料でまつ毛のエクステ(つけまつ毛)をしてくれた。
毎日何軒ものエステサロンを訪れていたが、そんなことは初めてだった。

広告の営業に行ったはずが、なぜか逆にサービスをしていただいて
施術をする1時間くらいの間に色んな話をした。

これからもっと多くのお客様に来てもらえるサロンを経営するための
準備を進めるのだと話してくれた。

こじんまりとしたその部屋が
なおみさんの強い意志と情熱に、なんだかとても不釣合いに思えた。


この人は絶対に成功する・・・

なんの根拠もないがそう思ったのをはっきりと覚えている。


個人経営のエステサロンは、経営や営業経験の未熟な女性が
美容業界への憧れから気軽に開業するケースも多いが、
実際の集客や体力のいる日々の施術は想像以上に大変で、
数年後には、雑誌に登場するサロンの顔ぶれも
ほとんど入れ替わってしまうほどに淘汰が激しい。

なおみさんはその頃、長年お勤めになった大手サロンを
辞めたばかりだと言っていたが、
何かがほかのサロン経営者の女性たちとは違っていた。

将来に対するビジョンが明確だった。


私はなおみさんのお陰で、長いまつ毛の自分の顔を何度も鏡に映しては
「女の子」だけが味わえる幸せな気分を束の間満喫させてもらった。


なおみさんとお会いしたのはその一度きりだった。


再会

それから4年の月日が経ったある日。

私は美容雑誌の仕事はとうに辞めていて、
そのあと移った職場から近い都心のマンションに引越した。
その引っ越したばかりの私の家の郵便受けに
一枚のエステサロンのチラシが入っていた。

毎日大量に投げ込まれるチラシをいつもは中身も読まずに
まとめてロビーのゴミ箱に捨ててしまうのだが、
なぜか目に留まったチラシの中の、ある女性の小さな横顔の写真。

突然蘇る記憶。


なおみさんだ!


都心でも一等地といえる高級住宅街に
なおみさんの現在のサロンはあった。

すぐにチラシから予約の電話を入れて、なおみさんのサロンに行ってみた。
東京の夜景が窓外に広がる高級マンションの上層階。
ラグジュアリーでゆったりとした、とても素敵なサロンだ。

4年ぶりにお会いしたなおみさんは、何人ものスタッフを束ねる高級サロンの
立派なオーナー経営者になっていた。

女性一人の力で、たった4年でこんなに変わるのか・・・と
心から感動した。
そして、こんなふうに再会できたことがとても嬉しかった。


それから、なおみさんとは時々メールのやり取りをさせていただいているが、
メールの文面からもいつも細やかな心配りが伝わってくる。
ご自身の豊富な人脈から、楽しい企画にもお誘いくださる。

まず自分から与えること、なおみさんは周りの人すべてに対して
常にそれを実践しておられる。


5年前のあの日、初めて訪れた広告の営業マンに
エクステをしてくださったのも
そんななおみさんの生き様の現われだったのかもしれない。


ランチタイムになおみさんのメールに返信をしながら
私は5年前の小さなマンションの一室での出来事を思い出していた。

そして、私のベトナム事業部も、
今は小さなマンションの一室?みたいなものだが、
5年後、いや3年後には、なおみさんのサロンみたいに
大きく成長していることを心に誓った。

そのためにはまず、私も自分から与える人間になろう。

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